【クロツラ日報】「教えて!!松本さん」のQ&A
- 松本悟
- 2018年2月26日
- 読了時間: 6分
SPOON会員みなさん、こんばんは! 本日の日報では、皆さんお待ちかねの「教えて!松本さん」の答えが福岡から届いたので、お送りします!質問は全部で8つ、松本さんがわかりやすく答えてくれています。 質問を送って下さった方々、クロツラネットの松本さんありがとうございました!! それでは、「教えて!!松本さん」のQ&Aコーナーの始まりです!! 【しつもん①】 2月5日の日報で紹介された「クロツラヘラサギのなる木」の写真で、クロツラが木にとまっていましたが、これはよくあることなのでしょうか。クロツラはいつも湿地の中にいるイメージがあります。 【こたえ】 確かに日本で木の上に乗っている姿を見ることは少ないかもしれませんが、繁殖地では木の上に巣を作ることもあります。 台湾ではマングローブの上に止まっているのを見たことがあります。近年、福岡の今津干潟では10月の飛来初期に時々樹上に止まっています。


【しつもん②】日本クロツラヘラサギネットワークの活動は、クロツラのカウント以外にどのようなことをやられているのですか。 【こたえ】メインの活動は、カウント調査です。毎月第3金曜〜月曜に約35〜40地点の調査をして、データを集約しています。 1月はアジア一斉センサス(主催:香港バードウォッチングソサエティ)にデータを報告しています。報告会も毎年1回、各地持ち回りで開催しています。今年は7月に鹿児島で開催する予定です。 他には、啓発活動としてブックレットを作ったり、環境省の釣り糸被害啓発ポスターを作ったり、海外ゲストを招いて国際シンポジウムを開催したりしています。



【しつもん③】 アジア一斉センサスでは日本のいろんな箇所で観測情報が挙げられていますが、どのような方達が参加されているのですか?(野鳥の会に協力をお願いしてたりするのですか?) 【こたえ】 クロツラネットで調査をしていただいている方のほとんどは野鳥の会に参加されているみなさんです。私たちの呼びかけに応えて特別にクロツラヘラサギを調査をしていただいています。 台湾では、野鳥の会を中心に保護区のレンジャーや、いくつかの野鳥愛好グループが参加しているようです。シーズン中、小さな観察小屋に寝泊まりをして保護区内のカウントをしている方もいますよ。香港も同じような感じですが、中国、ベトナムでは保護区などの管理者(行政)の調査が主になります。もっと各国で調査者が増えれば、クロツラはもっと見つかるかもしれませんね。 【しつもん④】 ご存知であれば教えていただきたいのですが、渡り鳥の睡眠についての質問です。先日、ふと長距離を渡る鳥は海上でどうやって眠るんだろう?と疑問に思いました。人間も居眠り運転は危険ですが、鳥の場合居眠り飛行で海に落ちた、なんて話は聞いたことがありません。少しネットで調べてみると、イルカのような半球半眠をしているだとか、実は飛びながら熟睡してるというような記事を見つけました。 クロツラヘラサギは渡の間、睡眠はどうしているのでしょうか?アジアの距離だと不眠不休で渡るのでしょうか。 あるいは普段どんな姿で、どれくらい寝てるのかも気になります。大きな嘴が邪魔にならないのかな、なんて想像しています。もしもご存知でしたら、クロツラヘラサギの睡眠について教えてください! 【こたえ】 私はクロツラヘラサギの渡り中の睡眠についての研究をまだ聞いたことがありません。多分他の鳥と同じように“半球睡眠”もありうると思いますが、そもそも2日も3日も飛び続けるケースがないのではないでしょうか。クロツラヘラサギの渡りルートを見ていると、沿岸沿いの干潟、島嶼を中継しながら利用しているので、ノンストップで長距離の移動はあまりしていないようです。以前、足環情報で沖縄―東京を1日で移動したという記録があるようですが・・・不確かです。 クロツラヘラサギの寝姿はこんな感じです。なるべく体温を下げないように、羽毛のない嘴と脚を羽毛の中に入れて暖かくして寝ています。一本脚で寝るのは片方の脚を交互に温めているためです。

【しつもん⑤】 日本でクロツラが媒体となって、世界と繋がっていますが、他でもこのような交流の懸け橋となっている鳥はいるのでしょうか?もしもご存知でしたら教えてください。 【こたえ】 鳥類学者や専門家の間でツル類、ガン類では調査の国際的なネットワークが古くからあると思いますが詳しくありません。 一般市民や行政を巻き込んだ取り組みとしては、トキやコウノトリが有名です。最近コウノトリは韓国とのネットワークが盛んになっていますし、鹿児島出水のツルの保護区と韓国の順天市の交流も活発です。 ただクロツラヘラサギは、トキやコウノトリのように専門家や行政が動いて市民が動くというのではなく、台湾、韓国、そして日本で多くの市民が自主的に様々な活動を行なっているのが面白い現象だと思います。そして最も重要な点ではないでしょうか。 (以下の質問は「クロツラヘラサギ プーの約束」についてです) 【しつもん⑥】「クロツラヘラサギ プーの約束」という素敵な絵本がありましたが、これはどのような経緯で製作されたのですか?本の最後に博多湾がでてくるので、日報で紹介していただいた博多湾の人工島事業反対運動と関係があるのでしょうか? 【こたえ】「プーの約束」に目をとめていただきありがとうございます。 この絵本は、人工島埋め立ての反対運動をしている時に作ったものです。日報にも書きましたが、自分が反対している埋立地に絶滅危惧種のクロツラヘラサギがやってきて日本最大の越冬地(当時)になりました。私はクロツラヘラサギの影響力を借りて、この問題に多くの人の関心を高めたいと思ったのが絵本の制作のきっかけです。 この頃、韓国でもセマングムやシファ湖、そしてクロツラヘラサギがやって来るソンドの干潟の埋め立てなどが問題になっていました。そこで韓国の人にも読んでもらいたいと思ってハングル訳をつけました。 この絵本の後日談があって、ソンドの少年が主人公の30分のTV番組もできました(私も少し出ましたよ)。 【しつもん⑦】 お話の中に出てくる子どものクロツラヘラサギ、プーの名前の由来はなんでしょうか?是非お聞かせください! 【こたえ】プーという名前は、この韓国語訳をしていただいた、チェ・ヘジンさんのメールアドレスが、poo@・・・・だったので、この名前をいただきました。 【しつもん⑧】お話の中で、クロツラたちが、「10年くらい前からみんなが好きな場所なんだよ」と言っていましたが、同じ個体のクロツラヘラサギは、同じ干潟や湿地に戻ってくることが多いのでしょうか? 【こたえ】 ほぼ同じコースで移動し、同じ越冬地で過ごすことが多いようです。足環付き個体で見ていると、J10やJ15、K79などが常連になっています。K97は錦江湾で「かなくん」と呼ばれているそうです。 越冬地で生息場所を広げているのは幼鳥が多いようです。好奇心が旺盛なのか、越冬地のキャパが足りないのか・・・。 河口干潟から内陸部の溜池などへの移動は、一緒にいたヘラサギ(内陸性)に連れられて行く場合が多いのではないかと思います。